PFAS汚染について、以下のような記事を書いてきましたが、実際の問題としては、PFASを除去するにはどうしたらいいかということになります。
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PFAS汚染で今特に問題になっているのは、人間の血液中の濃度のほかは、公共用水や地下水、それに水道水です。
今回は、浄水器でPFASは除去できるのか?ということと最近メーカーでもいろいろな試験結果が発表されているのでそれについて見ていきたいと思います。
いろんなメーカーの浄水器についても記事を書きましたのでご参考に。
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浄水器でPFASは除去できるのか?
浄水器でPFASが除去できるかという疑問に対しては以下の2点を考える必要があります。
一つは水中のPFAS除去技術には何があるかと、もう一つは浄水器の有害物質除去技術には何が使われているかということです。
水中のPFAS除去技術
水中のPFAS除去技術については、PFASに対する総合戦略検討専門家会議の第1回配布資料中にある
参考資料2 「飲料水中のPFOS及びPFOA」WHO飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書
に割と詳しく述べられています。
項目としては、8.4 処理方法とその成果の部分です。
それによれば水中のPFAS除去技術として、
- 浄水プロセスとして共通に使用される、凝集沈殿ろ過、オゾン処理、消毒処理はPFAS除去に効果的でない。
- 高圧膜処理であるナノ膜(NF)と逆浸透膜(RO)は、正常に運転することで安定性と信頼性のあるPFAS類の除去が可能。ただし、かなりのエネルギーおよび水資源を必要とする。
- 吸着技術の一つである活性炭は、水からのPFASの除去に有効である。
- もう一つの吸着技術であるイオン交換樹脂は、荷電PFAS種の除去に有効である。イオン交換樹脂は再生して使用できるものであるが、PFAS種の除去ではそれが困難で1回しか使用できず運転費用がかかる場合がある。
文書の内容をまとめてみると、一般的に水中のPFAS除去技術の中で効果的な順として以下のような順であると考えられます。
逆浸透膜(RO)>活性炭=イオン交換樹脂>凝集沈殿ろ過>オゾン処理、消毒処理
浄水器の有害物質除去技術
一方、浄水器の有害物質除去技術としてどのようなものが使われているのか見ると、以下のものが多く使用されています。
- 活性炭:石炭やヤシ殻などを高温で加熱処理して作られたフィルターです。各種物質を吸着する能力があり浄水器には良く使われます。
- 中空糸膜:小さな穴の開いた繊維を束にしたもので、その穴の大きさによっていくつかの種類があります。
- 不織布:各種樹脂繊維を織らずに絡ませて作った布であるが、それをフィルターとして使う。
- セラミック:微細な孔をもつセラミックをフィルターとして使う。
- 逆浸透膜(RO):活性炭や中空糸より更に小さな穴の開いたで浸透圧を利用して水だけを通過させるフィルターです。
- イオン交換樹脂:樹脂の一部に交換されるイオンを放出する基を持つ樹脂で、各種イオンを効率的に吸着除去できる。
浄水器によるPFAS除去の可能性
水中のPFAS除去技術と浄水器の有害物質除去技術を比較すると、共通に使われている技術があることがわかります。
逆浸透膜(RO)と活性炭とイオン交換樹脂がそれです。
従って、これらの技術をうまく使っている浄水器においてはPFASを除去できる可能性は高いということになります。
昨年来、PFAS汚染の問題がクローズアップことにより、浄水器メーカーもPFAS除去について試験を行ってきており、最近はその結果も公表されているので見ていきましょう。
浄水器メーカーによるPFAS除去に関する試験結果
PFAS除去に関する試験結果を公表しているメーカーとして以下のところがあります。
三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
三菱ケミカル・クリンスイ株式会社は、2023年6月9日のニュースリリースで、
クリンスイ浄水カートリッジにおける、PFOSおよび PFOA除去試験結果のお知らせ
を公表し、自社の浄水器用のカートリッジが、第三者機関で浄水器協会(JWPA)で定められた規格基準(JWPAS B基準)に規定された試験方法による試験を実施してPFOS、PFOAを除去できるとしました。
試験した第三者機関は公表されていません。
対象のカートリッジは、
- CPC5(およびCPC5W,CPC5Z)ポット型浄水カートリッジ
- HGC9S(およびHGC9SW,HGC9SZ)蛇口直結型CSPシリーズ用浄水カートリッジ
- MDC01S(およびMDC01SW,MDC01SZ)蛇口直結型MDシリーズ用浄水カートリッジ
- UZC2000(HUC17021も同性能です)ビルトイン用浄水カートリッジ
- UHC3000ビルトインアルカリ整水器用浄水カートリッジ
- CPC7(およびCPC7W) ポット型アルカリ浄水カートリッジ
- HSC17021(およびHSC17023) スパウトイン用浄水カートリッジ
- HCC17023 カウンターオン用浄水カートリッジ
- SSC8800 据置型SSX880用浄水カートリッジ
となっています。
株式会社イーテック
https://etec.jp/news/pr210527に、
セントラル浄水器『家中まるごと浄水器 ピュアセントラル』及びポット型浄水器『ウルオ/ULeAU』・ペット専用浄水器『わんにゃん浄水器』の有機フッ素化合物PFAS (PFOS・PFOA)の除去性能に関して第三者検査機関による通水検査を行った結果、ろ過した浄水ではPFOS・PFOAともに検出されず、除去率95%以上であることが証明されました。
とあるのですが、いつのニュースリリースなのか、どの様な規格試験を行ったのかは書いてありませんでした。試験した第三者機関も公表されていません。しかも、ニュースリリースのページには書かれておらず、リンクもしていない状態です。
株式会社 メイプル・リンク
株式会社 メイプル・リンクは、セントラル浄水器『ソリューヴ』を販売している会社です。
作成日 : 2020-11-12 更新日 : 2023-04-17のHP内容として、【試験結果あり】有機フッ素化合物は浄水器で除去できるか試験というページがあります。
ここに、
セントラル浄水器『ソリューヴ』の「有機フッ素化合物」PFOS/PFOA除去性能を把握にするために第三社検査機関に検査を依頼しました。
とあり結果として、
PFOA 原水濃度 52ng/L 通過水 検出せず 除去率 99%以上
PFOS 原水濃度 60ng/L 通過水 検出せず 除去率 99%以上
という数値が記載されています。
こちらも試験の規格や第三者機関がどこなのかは公表されていません。
Panasonic
Panasonicの浄水器については、その性能比較の表示のページに、除去対象物質としてPFOSおよびPFOAが記載されています。
何リットルの水まで処理できるかが書かれており、PFOSおよびPFOAについては、浄水器協会(JWPA)で定められた規格基準(JWPAS B基準)による除去率80%の値になるまでの処理量が書かれています。
2023.9.4追記
ブリタのカートリッジ
2023.8.23に、ブリタのHPにブリタ浄水フィルターカートリッジによるPFOS/PFOA除去性能についてというニュースリリースが発表されました。
- マクストラプラス フィルターカートリッジ ピュアパフォーマンス(ポット型浄水器、タンク型浄水器用)
- マイクロディスク フィルターカートリッジ(ボトル型浄水器、カラフェ型浄水器用)
この二つのカートリッジは、JWPAS B.210試験でPFOS及びPFOAを80%以上除去できることが確認されたという記事になっています。
追記ここまで
マルチピュアのAquaextra(アクアエクストラ)シリーズ
このメーカーは、海外のブランドの輸入代理店です。従って、この機種を取り扱っているメーカーもしくは卸してもらっているメーカーはほかにもあるかもしれません。
この会社のブログに、2022.06.13と比較的早い段階で、【PFOS・PFOA】有機フッ素化合物を安全に除去する浄水器って?という記事が載っています。
ただ、どの様な試験を行ってPFOSおよびPFOA除去を確認したかは記載されていません。
株式会社ユーピー
この会社は、そのHPの中に、「Re飲料水浄化システムは、良水と言われた多摩地区の水を取り戻します。」というページを持っています。
そこには、有機フッ素化合物の除去データを持つ浄水器という文言があり、JFRE(日本食品分析センター)の試験結果も載せられています。
試験結果の公表されていないメーカーもある
PFAS除去(特に、PFOS、PFASの除去)については、まだ試験結果を公表していないメーカーもありますが、今後、結果を公表するメーカーは増えてくると思います。
自分の飲んでいる水について理解して浄水器を選ぶことが大切
今までPFAS除去に関して公表しているメーカーについて見てきましたが、浄水器と言っても様々なタイプがあります。
自分の飲んでいる水がどういうものなのか、どのくらいの水を何に使うのかということを考えて浄水器を選ぶのが大切だと思います。
今後、各社の浄水器について詳しく見ていくつもりです。
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