多少遅くなりましたが、11月の半ばに7年ぶりの日本のゴジラ映画「ゴジラ-1.0」を観てきました。
今回は、戦後間もない日本へのゴジラの登場ということで、敗戦の絶望の中、さらに追い打ちをかける形でゴジラが襲ってくるという身もふたもない状況の世界とどうゴジラに対峙するのかが、個人的には興味の中心でした。
結論から言えば、個人的にはゴジラ映画の中では傑作のひとつだといいうのが感想です。
是非、映画館の大画面で見ることをお勧めします。
ゴジラ-1.0公式サイトはこちら
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ゴジラの描き方はどうだったのか?
この映画は公開からすでにかなり経っていますので、いろんなサイトであらすじや感想が述べられています。
感想などをみたければ、映画.comやFilmmarksのゴジラ-1.0をみればたくさん載っています。評価は、この記事を書いている時点で、映画.comで3.9、Filmmarksで4.0でかなり高評価となっています。
今回のゴジラは核実験による被爆前の状態のものも出てくるのですが、それは、凶暴な肉食竜を思わせる大きさで、何十mもあるような大きさではありません。5mほどでしょうか。しかも熱線も吐きません。
一方、被爆したいわゆるゴジラは、大きさは初代ゴジラとほぼ同じ50.1mと設定されています。このゴジラはっきり言って怖いです。舞台が戦後の日本なので、対抗できる新兵器はありえないので、一方的に蹂躙されることになっています。
海の中を追ってくるゴジラ、銀座を破壊するゴジラ、それに背びれ(?)が青白く光ってジャキ、ジャキとせりあがってきて放射熱線を吐く姿は、圧巻というかかっこいいです。ただし、1回熱線を吐くとしばらくは回復の時間が必要な設定になっているようです。
映画館で怖くて泣く子供がいたというのも納得です。
ただ、この破壊においても、人間の血が吹き飛ぶような演出は見られません。これは、通常ならありえないわけですが、このゴジラ-1.0が世界展開を狙った作品であることが理由で残虐シーンにならないような作りになっています。
人間の描き方はどうだったの?
ゴジラ-1.0では、人間側にもちゃんとドラマが入れられています。その点がシン・ゴジラとは全く違うところですね。
神木隆之介が演じる敷島浩一は、特攻隊の生き残りというか特攻から逃げて大戸島(初代ゴジラにも出てきた架空の島)に着陸。そこで、被爆前のゴジラに整備守備隊とともに襲われるのだが、そこでもゼロ戦の20mm機関砲を打てず、守備隊をほぼ全滅させてしまう。
完全にトラウマになってます。この時20mm機関砲打ってたら、話はそこで終わっっちゃいますね。
浜辺美波演じる大石典子は、戦後の日本で自分の子供ではない赤ん坊を育てるというもう一人の主人公をやっているのですが、これもまあ、戦争のトラウマの一つかもしれないですね。
個人的には、隣人の太田澄子を演じる安藤サクラのほうが印象に残りましたが。
その他にも結構いい役者さんが出ています。
この人間ドラマの部分は思いっきり安っぽいとか上っ面だけで取って付けたようと酷評する方もいるようですが、個人的には十分すぎるだろと思いましたし、一緒に行った連れもよかったといっておりました。
もちろんご都合主義の部分があるのは否めないのですが、それを言ったらゴジラの描写部分にもそのような部分は多々あるわけで、ある意味バランスは取れているのだろうと思います。
登場した旧日本海軍の軍艦
このゴジラ-1.0では、細かいものは除くと旧日本軍の兵器として出てくるのは、戦闘機としてのゼロ戦、震電と戦車の4式中戦車、それに軍艦となります。
機雷除去のための木造の掃海艇(機銃搭載)も活躍するのですが、旧日本軍の兵器ではないのでのぞくと出てきた軍艦は、
- 重巡洋艦 高雄
- 駆逐艦 雪風
- 駆逐艦 響
- 駆逐艦 夕風
- 駆逐艦 欅
このほかに海防艦 生野が出てきているとのことだが、シーン思い出せずです。
ゴジラVS重巡高雄
この中で、何故か高雄だけは武装が解除されていない状態で登場します。設定が1947年でぎりぎりとのことですが、実際の高雄は1946年10月にマラッカ海峡で処分沈没しています。この際高雄はイギリス軍に接収されていますが、武装解除についてはよくわかりませんでした。
いずれにしろ、重巡高雄はゴジラ-1.0では、敷島たちが木造の掃海艇「新生丸」でゴジラと戦闘して絶体絶命の時、20cm主砲の斉射をゴジラに打ち込んで一旦撃退するという大活躍をしています。
もっともすぐに、ゴジラに攻撃され、ぼこぼこにされ始めます。船体が大きく傾いたときに主砲の0距離射撃で再度ゴジラひるませるのですが、海中に潜ったゴジラからの放射熱線を海底から放たれ一瞬のうちに跡形もなく破壊されてしまいます。
とはいえ、重巡高雄は1艦でよく戦ったといえるのではないでしょうか?
ゴジラVS海神(わだつみ)作戦駆逐艦隊
ゴジラ-1.0では、ゴジラに対して最も強力であるはずの米軍はソ連との対立問題で手を出さないばかりでなく、日本国政府も表には出てきません。敗戦国で武装は解除され、兵器も本来持てない状態と説明されています。
こうして、旧海軍の軍人や民間人によるゴジラ掃討作戦が立案されるのですが、立案者は、吉岡秀隆が演じる野田健治という戦時中に海軍工廠で技術士官として兵器開発していた人です。実際には主人公の敷島とともに、「新生丸」に乗り込んで機雷を除去に当たりつつゴジラと対峙する現場にもいました。
海神作戦は、ゴジラに大量のフロンのガスボンベを付けたケーブルを巻き付け、一気に発泡することによってゴジラを相模湾の深海に一気に引きずり込み、水圧で圧死させるという作戦です。
またそれに耐えた場合は、同様にケーブルに取り付けた膨張式の浮袋を膨らませ今度は海中を急上昇させ急速な減圧により体内組織の破壊を狙うというものです。
実際には、本当にそんなところまで沈むのかとか膨張するのかとか色々問題点はありそうですが、通常の生物は、一気に加圧・減圧されれば死んでしまうのは明らかです。
この際に使われた駆逐艦は映画の中では、武装解除された状態になっています。
敷島が乗る「震電」による誘導で海におびき出されたゴジラに対し、最初に、夕風と欅が、囮となって乗務員脱出後、操舵を固定し突っ込んでいきます。
この2隻の駆逐艦は、ゴジラの放射熱線によって吹き飛んでしまいます。ですが、ゴジラは放射熱線を一度吐くとしばらくは吐くことができず、動きも多少緩慢になっているようです。
この間を利用して、雪風と響がケーブルをゴジラの体に巻き付けることに成功、ゴジラの体は海中に引きずり込まれます。
ですが行動不能までには至らなかったたため、予備の急上昇の作戦が決行されます。しかしそれでも、ゴジラは生きていて水中から引き揚げることができない状況になってしまいました。
ここまでがゴジラVS駆逐艦隊の部分になります。
この後、タグボートの応援でゴジラを水上まで引き上げ、敷島が乗る爆弾を積んだ「震電」をゴジラの口に突っ込ませ(敷島は脱出装置により脱出)、頭部を爆破してゴジラを海中に沈めることになります。
映画ではこのように描かれていますが、実際のこれらの駆逐艦はどのような運命をたどったのでしょうか?
夕風
夕風は1921年(大正10年)に竣工した峯風型駆逐艦の10番艦です。太平洋戦争当時はすでに旧式の駆逐艦であり、主に日本最初の航空母艦の鳳翔とともに行動してた時期が長い、戦争後半には、訓練を行うための艦船の随伴などが多く、戦闘に参加することがほとんどなかったため、終戦時もほぼ無傷で残存していました。
戦後は復員船として活躍しています。
欅
欅は1944年10月(昭和19年)に竣工した松型駆逐艦駆逐艦(18番艦)です。丁型駆逐艦とも呼ばれます。松型は、戦時中になってから建造が始まった戦時量産型の駆逐艦で、後期になって建造された橘以降を橘型と呼ぶ場合もあります。
欅については、特別な戦歴もなく無傷で終戦を迎えており、戦後は復員船として使用されています。
雪風
雪風は1940年(昭和15年)1月に竣工した陽炎型駆逐艦の8番艦です。
雪風は、太平洋戦争中いくつもの海戦に参加し、戦果を挙げてなお大きな傷を負うことなく終戦まで生き残った、日本海軍最大の幸運な駆逐艦と言われています。
戦時中からその幸運ぶりは有名で、呉の雪風、佐世保の時雨と謳われていました。
参加した海戦も、戦争初期のスラバヤ沖海戦から大和の特攻である最後の艦隊戦、坊ノ岬沖海戦にまで及びます。
戦後は復員船として従事した後、戦時賠償艦として中華民国(現在の台湾)に引き渡され、丹陽と命名されています。
響
響は、1933年(昭和8年)に竣工した特型駆逐艦の22番艦です。また、特型駆逐艦内の区分では、特III・暁型の2番艦となります。
特型駆逐艦は、太平洋戦争開戦時にはそれ以降の駆逐艦が竣工していたものの依然主力駆逐艦でした。
響は、キスカの攻略、それに撤退にも参戦しています。
響は、戦時中に3度の大きな損傷を受けても沈まず終戦まで生き残った艦であり、不沈艦、不死鳥などと呼ばれています。そして、終戦の日の8月15日も対空射撃を行ったとされ、日本海軍最後の砲撃であったろうといわれています。
戦後は復員船として従事した後、戦時賠償艦としてソビエト連邦に引き渡され、ヴェールヌイと命名されました。その後さらに、練習艦となった際、デカブリストと名称変更されています。
ゴジラVS旧日本軍その他の兵器
被爆後のいわゆるゴジラと戦った日本軍の兵器は、先述した爆弾を搭載した震電と銀座来襲の時に対応した4式中戦車数台です。
しかしながら、震電の武装は本来30mm機関砲4門、4式中戦車の主砲は75mmでしかなく、ゴジラに全く歯が立ちなません。
重巡高雄の20cm主砲10門の斉射がいかに強力かわかります。武装解除された駆逐艦雪風の主砲でさえ12.7cm連装砲3門ですから、他の兵器に比べれば圧倒的に強力です。
戦後の復興とゴジラの来襲
ゴジラ-1.0は、最初にも書いたように戦後間もなくの日本にゴジラが襲ってくるという絶望的なストリーが描かれますが、それに立ち向かって希望を取り戻すという日本の復興の原点のような面が、描かれていると思います。
戦闘面も色々破綻してるだろとか人間ドラマがダメダメだろかいう面は、色々あると思うのですが、根底に流れているゴジラ映画として人間が自らの不条理に対峙して克服していくと一点があるので、個人的に傑作のひとつだと思うわけです。
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